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ダイジャ
高橋安幸
高村薫
滝口康彦
立石泰則
田辺聖子



ユン・チアン
チェーホフ
チャペック
張平
陳舜臣













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コナン・ドイル
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徳田秋声
徳富蘆花
富永俊治
伴野朗
J.トンプスン
S.L.トンプスン


トマス・ダイジャThomasDyja
『白球の王国』
『白球の王国』
Play For A Kingdam
訳:佐々田雅子
文春文庫
平成21年3月7日読了
 南北戦争時、両軍が対峙する最前線で事も有ろうに両軍が野球の試合をしていた…なんて着想は面白いのですが、 正直それだけかなぁと。駄作と言い切るつもりは無いのですが、経歴によると「編集者としても活躍」していたのが 嘘のような料理下手でした。
 まず登場人物の紹介が雑です。
 例えば初参加のチームで名前だけ紹介されても覚えきれませんよね?相手がナニかしでかしてくれるとか、しばらく 一緒にプレーして初めて具体的に認識出来る訳で、そういう意味では不親切です。
 次にすぐに試合が始まるのはイカガナモノカ?
 終盤に強烈な戦闘シーンが出てくるのですが、むしろそういうモノが描かれた後の方が奇跡のような試合の成立が 美しく思われるのではないでしょうか。
 細かいことを言うとキリが無いのですが、簡単に言うならば「詰め込み過ぎで勿体無い」でしょうか。
 作者が野球を好きか否かは疑問が残りました。そういう意味でも採点が辛いかも知れません。
【関連作品】
『赤い武功章』スティーヴン・クレイン
同じく南北戦争をテーマに書かれた作品ですが、僕としてはコチラの方が面白いですね。野球は出てきませんけど。
高橋安幸
タイトル
『伝説のプロ野球選手に会いに行く』
白夜書房
平成23年7月13日読了
 “伝説の二塁手”苅田久徳と“和製ディマジオ”小鶴誠の登場となると飛び付かない訳にはいきません。更に他の諸氏の話もまた面白く読みました。 こういうコトが出来るんだからモノ書きは羨ましい商売だなぁ…いや、苦労の方が多々ありましょうが。
 ただなぁ、筆者が顔を出し過ぎるのはどうかと思います。そういう企画で進めたのだと言われればソレまでですが、読者としては筆者の興奮なんか ハッキリ言って興味が無い。ましてやそれなりに高い知名度を持っているのならともかく(僕が無知なだけかもしれませんが)そうでもない場合は黒子に 徹した方が宜しかろうと。それが難しいので「全て紹介する」とまえがきで書いていますが適当に端折っており、その捨てた部分こそ僕は読みたかった んですがねぇ。
 いっそのこと「解説的対話」の相手として登場する大滝詠一氏に編集をお願いしたら良かったんじゃないかしらん…無理か。
高村薫
『マークスの山』
『マークスの山』全二冊
講談社文庫
平成19年7月5日読了
 一言で言うと「そんなにスゲェか、コレ?」と思いました。
 単純に読み物としては読み辛く、ミステリーとしては設定が偶然に頼り過ぎているのではないか。警察小説(なんて ジャンルが有るのか?知らなかった)にしては組織を抉っていない気がする。グチャグチャとした憎悪は感じられましたが。
 全体としては読み辛く、かつ面白くも無い小説でした。
 ちなみに解説で「これは警察小説でもない」と言いつつカバーでは「警察小説の最高峰」と謳っているのは どうなのかねぇ?更に言うとカバーで「泣ける…泣ける」と書いていますが、僕は全然でした。大体解説の冒頭が 「私は三日がかりで読んだが、ちっとも退屈しなかった」って 酷くないかしらん??
滝口康彦
『鬼哭の城』
『鬼哭の城』
滝口康彦
平成23年10月8日読了
 武士道無残…という裏表紙の言葉と著者が小林正樹監督『上意討ち 拝領妻始末』の原作者であるというので手に取ったのですが、辛かった…。
 登場人物が次から次へと出てくるのは歴史ものの常ですが、更に地方の、となると皆目付いていけません。長編ならばその内になじむのですが短編なんで 人物関係を把握しようとしている間に幕切れです。まぁ僕の読み手としての力不足と言われればソレまでですが、力を必要とさせられるのもなぁ。
立石義則
『魔術師』
『魔術師
三原脩と西鉄ライオンズ』(全二冊)
小学館文庫
平成19年6月2日読了
 著者は本来経済関係が専門だそうで、なるほど西鉄など親会社の経済状況やその社会背景を分析しているのは 非常に面白い。今まで読んだ単純(または純粋)な野球関連の本ではなかったであろう視点で大変勉強になった。 また丹念に史料に当たっているので2リーグ分裂に関しても判り易く、知らなかった事実を教わり興味深かった。
 ただ残念ながら著者の関心が散らかっていて読後感はスッキリしない。
 書きたかったのは人間・三原脩なのか、また西鉄ライオンズ時代を中心とした三原脩伝なのか?それとも副題の 通り三原脩の率いたライオンズなのか?
 それならばもっとピントの合った作品となっていたはずなのだが、惜しむらくはそれらに加えて三原が理想としたで あろうプロ野球像(球団は独立採算で成立しており本社の勝手にされない、など)やジャイアンツ(筆者は頑なに“巨人軍”と 書くのだが何故か?)ひいては読売との因縁について拘泥し過ぎている為に後半は読み辛い。特に大洋時代と西鉄の “黒い霧事件”に関しては「仕方が無いから書いている」という感じに受け取られ、やや不快ですらある。
 特に現在のプロ野球の状態、特に問題点全て読売が根源であると言うのは単純に過ぎる気がする。
 加えて言うとやや用語にも首を捻る点があり、もっと厳しい編集者が居てしかるべきではないか?例えば「ゴールド・スター (現、千葉ロッテ)」や「パシフィック(のちの大洋、現・横浜)」(上巻172ページ)はイカガナモノカ?
 いずれも外れては居ないが正確と言うには大雑把に過ぎ、特に後者の場合は「パシフィック」は数度の名称変更を経て 「松竹ロビンス」になった後、大洋に吸収されている(故に現在の横浜球団の成績に松竹のソレは含まれていない)という 状況を考えると、むしろ間違いとして訂正が必要なのではないかと思われる。
【関連書籍】
『球団消滅幻の優勝チーム・ロビンスと田村駒治郎中野晴行
『三原脩の昭和三十五年「超二流」たちが放ったいちど限りの閃光富永俊治
田辺聖子
『私本・源氏物語』
『私本・源氏物語』
文春文庫
平成24年1月24日読了
 初めて読んだ『源氏物語』がコレって…みたいな感じですが、仕方が無い。せっかくのパロディなのにと作者としても残念でしょうが。
 面白いのは日常会話が関西弁なコトで、さもありなんと思いつつ登場人物が生き生きとしています。なにより下品なのがまたね。
 しかし作者が書きたかったのは、語り手による中年の人生訓ではあるまいか? (内容についてはご一読を)
 繰り返しがやや諄く感じますが、まぁ若い女性たちよ!という作者のエールと思えば当然かと。


ユン・チアン Jung Chang
『ワイルド・スワン』
『ワイルド・スワン』
Wild Swans Three Daughters of China
訳:土屋京子
講談社:全二巻
平成18年12月9日読了
 発表当時はイザ知らず、今読んでみるとそんなに衝撃的では無いなぁ…と。史料の一つとしては別ですが、訳者あとがきほど 感動もナニもしませんでした(基本的に冷血漢なんで)。
 なんとなく自分の好き嫌いだけで展開しているので、もう少し客観的に書いてくれればまた違ったのでしょうが、そうすると 当時アレだけの話題にならなかったかもしれませんね。判り辛くなって。
 『太陽の少年』という中国映画が有るのですが、それに似た世界だったのは面白かったのですが。
アントン・パーヴロヴィチ・チェーホフ
Anton Pavlovich Chekhov

『退屈な話・六号病室』
『退屈な話・六号病室』
訳:湯浅芳子
岩波文庫
平成20年11月14日読了
 退屈と言いつつ全然退屈しませんでした、ハイ。前者は功成り名を遂げた人物が、実は瑣末な日常の出来事に ウンザリさせられている話…と言ってしまえば簡単ですが、もう少し細かいです。
 結局誰もが自分勝手であり、それに振り回されている主人公に安寧なる晩年の日々は訪れない。なんだか100年 以上も前に、それも外国で書かれた小説とは思えないくらいに共感出来ました(僕自身はまだ老境に差し掛かっていない つもりですが)。
 特にラストの切なさはナンとも言えませんでした。
 後者もまた劇的であり面白いのですがシンプルで読み易いのは前者であり、ドラマにでもしたら面白いだろうなぁと。
カレル・チャペックKarel Capek
※正しくはCの上に記号がついています※
『山椒魚戦争』
『山椒魚戦争』Valka s mloky
※正しくはaの上に記号がついています※
訳:栗栖継
岩波文庫
平成21年8月5日読了
 高校以来久々に読み返したのですが面白かったですね、ただ面白いの意味が当時とは若干違いますが。
 初読の時は山椒魚が言葉を話したり果ては人間と領土争いをするのが単純に面白く、また全体を通しての 主人公が居ない構成が新鮮(と言っても僕の産まれるはるか前の作品ですが)で、尊敬すべき岩波文庫を読んで いるという高揚感と合わせワクワクしたものでした。
 しかし大人になって読んでみると当時の世相や国際情勢に対する皮肉や、人生とはナンぞやという思いが 切なく迫ってきます。
 そう考えると投げ出したようにも思えた結末は、コレ以外に無い最適な終わり方なんでしょうね。
張平ZhangPing
『凶犯』
『凶犯』
XiongFan
訳:荒岡啓子
新風舎文庫
平成20年12月8日読了
 久しぶりに徹夜で読みそうになりました。いやページを閉じるのが辛いという経験は最近では珍しくソレだけ素晴らしいなと。
 訳者の後書きによると翻訳後、出版社探しに梃子摺ったそうですが勿体無いなぁ。どうして手を出さなかったんだろう、こんなに 面白いのに?と思ったのですが、半歩下がると当然かも知れません。
 粗筋を話せば面白くはなかろうし(簡単過ぎるので省略)、また“仕掛け”は単純で最初の2章を読めば結末まで判ってしまいます。 スレた読者を喜ばせるようなドンデン返しは有りません。パズル好きにはつまらんでしょうな、所謂サービス精神にも欠けるし。
 ならば僕はナニに惹きつけられたか?
 カッコつけて言えば心意気でしょう。
 往年の黒澤作品を観るような、権力の腐敗や人間の堕落に対する怒りが伝わってきて腹の底から力が沸いてくる感じがするのです。 『天国と地獄』では後頭部を殴られたような衝撃を感じたし、『悪い奴ほどよく眠る』を観た後は加藤武と一緒に絶叫したくなりましたが (迷惑な客だな…)、そのときと同じ感覚で、誰かに訴えたくなりました。
 …って誰も相手が居ないのですが。
陳舜臣
『雨過天晴』
『クリコフの思い出』
『景徳鎮からの贈り物』
『杭州菊花園』
『獅子は死なず』
『竹におもう』
『中国畸人伝』
『中国傑物伝』
『桃源遥かなり』
『弥縫録』
『闇の金魚』
『妖のある話』
『聊斎志異考』
『雨過天晴』
集英社文庫
平成24年1月17日読了
 こう言っちゃ申し訳ないが、雑談集。
 アチコチに書かれた短文を集めたものなのですが気楽に楽しめて良い感じです。ポロポロと勉強になるコトが散りばめられてるあたりがミソで、 暇な時に、即ち考える時間が持てる時にツラツラと読むのが宜しいかと思います。…この方面ばかりに熱心なのも作者としては不本意でしょうが。
『クリコフの思い出』
新潮文庫
平成年10月31日読了
 コース料理のようにアレコレと入っていて美味しかったが、やはり僕が求めるのは昭和初期の神戸を舞台にした作品ですね。ミステリーのようだし 歴史秘話のようでもある、で面白い。他の人の筆だともう少し嘘臭くなったりするのでしょうが、このあたりの描写というか筆使いが凄い。
 もっとも歴史を扱ったモノは好もしくてならないのですが。
中国工匠伝景徳鎮からの贈り物』
新潮文庫
平成年11月6日読了
 やはり力の入れ加減が絶妙で、リラックスして読むには最適の一冊。解説にあるようにほとんどの作品の冒頭に作者と思われる“私”が登場し、 親しく語りかけてくるのが巧妙な仕掛けなのではありますまいか?…巧妙と言うとややいやらしい響きが有りますが、他に言葉を知らないので。
 印象に残ったのは作品を作る際には自分の中に“沸きかえるような熱”が出てくるのを待つという件で…と言う話をすると、サボってる言い訳と しか思われないんだろうなぁ。
『杭州菊花園』
徳間文庫
平成22年8月10日読了
 どんなものでも執筆にはそれなりの労力が必要だとは思いますが、本書は軽やかな語り口で読書と言う行為をゆったりと楽しめました。 敢えて言うなら肩肘を張り力瘤を作って青筋を立てて作り込んだ小説ではなく、のんびりとお茶とともに楽しむ読み物とでも言う感じでしょうか。
 なんとなく話し上手な知り合いのおじさんに煙に巻かれている気がさせられなくもないのですが、ま、それはそれで愉快な夕べでありましょう。
『獅子は死なず』
講談社文庫
平成23年6月1日読了
 短編集だが作者の顔の出し方で出来が左右されるのは毎度のコトでしょうか?随筆に近いと楽しいんですよね、物語を聴いているようで。そういう意味では 特に前半が印象的です。特に作者の推理(推測ではなく、もう少し自由に)が入る辺りは知的遊戯と言うように。
 氏の長編となると読んでいないので判りませんが、少なくとも短編としてはスケールが大きくなると持て余すように思えるのは残念で、表題作がやや 食い足りない気がしました。
 個人的には近現代の、特に神戸などを舞台にした推理“風”が好ましいのですが。
『竹におもう』
徳間文庫
平成23年5月3日読了
 あれこれと楽しく読んだ。
 特に美術や工芸に関するものは類書が無く貴重な勉強をさせて頂いている気分にもなる…と言っても姿勢を正すなどしていないが。 困るのは舞台として度々登場する西域に出掛けてみたくなることくらいか?
 ひとつだけ異論を唱えたいのは味覚についてだが、これは育ちが関東と関西で異なるのだから仕方が無い。
『中国畸人伝』
新潮文庫
平成年10月7日読了
 ただ雑に読んだことを惜しむ。
 もっとゆったりと構えて手に取るべきであり、読書の楽しみを自ら放棄するような読み方は慎むべきだと反省した…感想になってないけど。
『中国傑物伝』
陳舜臣
中公文庫
平成23年3月4日読了
 作者の思い入れが伝わり楽しく読んだ。
小説にしてくれた方が読み易いのではないかとも思ったが、楽しく読めるおサイズには纏まらないん だろうなぁ(長編が楽しくないと言うのではありません)。 
『桃源遥かなり』
徳間文庫
平成23年8月29日読了
 以前に自身でも書かれていましたが、やはり女性を描くのが苦手なのだろうなぁと少々残念な作品集。魅力的な女性が登場するのですが、彼女たちの 描写が香ってこない。短編ならこれで良いようにも思いますが、長編だとどうなるのかしらん?と勝手に心配しています。そう言いつつ代表作であろう 長編には手を出していないんですけどね、まだ。
 他にあまり書き手が居ないであろうテーマについて短編で良いので書き溜めて頂けないかなんて我儘なことも考えてしまいます。
中国名言集弥縫録』
出版社
平成23年8月23日読了
 知っているつもりになっていた言葉について蒙を啓かれるコトが多く、楽しく為になった。特に印象深かったのは「用うること土芥のごとし」で、 ごもっともと思いつつも怖くなる。人の上に立つのが嫌な僕ですが下になるのも嫌なもんだ…戦闘集団だからだと考えれば当然ですが、これを普段に 応用しようとする上司が居たら逃げた方が良いですな。
 プロ野球で名監督と言われる方たちは実はやっていそうですが。
『闇の金魚』
講談社文庫
平成23年6月27日読了
 悪い意味で作者の「育ちの良さ」が出てしまったように思われる作品。もっとコッテリとした濃厚なのを期待したが、まぁ作風とかも有りますからね。 仕方が無いんでしょうが。ただ清朝が倒れ激動する中国と日本における暗闘など興味深い設定なのでね、ついつい手に取ってしまいます。
 えげつない作画者を選んで、大胆に脚色させたら相当なモノが出来そうですが…怖いかなぁ。
『妖のある話』
中公文庫
平成23年1月15日読了
 苦手な女性描写の練習に…と始めたものの他の仕事の為に中断してしまうくらいですから、 まぁ出来は推して知るべし。気軽に読めるエッセイでした。
 それにしてもさすが中国、いろんな奴がいるもんだ…。
『聊斎志異考中国の妖怪談義
中公文庫
平成23年10月31日読了
 氏の語りも悪くはないのですが、残念ながら手元に『聊斎志異』(角川文庫版)が有るもんでちょっと外した気分です。もちろん理解 しきれない部分も有るのですが幸いにして元を読めるのだからそっちを読むべきだろうと自分に言い聞かせてしまいました。




コリン・デクスターColinDexter
『カインの娘たち』
『消えた装身具』
『ニコラス・クインの静かな世界』
『カインの娘たち』
TheDaughtersOfCain
訳:大庭忠男
ハヤカワ・ポケットミステリ
平成20年7月6日読了
 中途半端な印象が強く、果たしてこのような作品を“現代本格シリーズの最高峰”なんて言って良いのか知らん? …まぁどうでも良いんですけど。
 単純に小説として読もうとすると登場人物の描写に深みというかコクが無い。シリーズ常連のキャラクターの場合は 僕がお約束を知らないだけでしょうから(シラけつつも)諦めるとしても、その他もですからねぇ。特別に魅力が無い。 また語り口もつまづく感じがしてスッキリしない。
 更に謎解きパズルとしても判り辛くかつバレバレ(そういう組み立てなのですが)で、読んでいて先を急ぎたくなる ような磁力が無い。
 主人公の体調が甚だ不良な本作ですが、むしろ一番不調なのは作者では無いかと??
『消えた装身具』
The Jewels That Was Ours
訳:大庭忠男
ハヤカワ・ミステリ1592
平成19年1月30日読了
 切なさの漂うラストが良い、フリーマントルの初期の作品のような苦さも無く(それはそれで大好きなの だが)透明な悲しさとでも言いましょうか?
 『ジェリコ街の女』でもそうだったと思い出しました…ソコしか覚えていないけど。我ながらバカだなぁ。
 全体としても切れ味鋭い名探偵が大活躍するでもなく、悪魔的天才犯罪者がトリックを駆使するでもなくも 口で説明したら新聞記事にでもなりそうな身近な事件であり、主人公のモース主任警部もまた失敗したりで 僕好みでした。
 難を挙げるとしたら邦題で、もう少し小説全体を現している原題と似たニュアンスを出せなかったものか?と 残念でなりません。
『ニコラス・クインの静かな世界』
TheSilentWorldOfNicholasQuinn
訳:大庭忠男
ハヤカワ・ポケットミステリ
平成20年6月30日読了
 およそミステリ、それも名推理が中心であろうを楽しむ素質が無いのに時々手を出してしまうのですが、そういう意味で 今回も失敗した感じです。
 なんで読んじゃうかなぁ?
 正直な話このシリーズのあまり熱心なファンではないので感想は書く必要も無いか…と言ってしまうと終わってしまうので 一言だけ。
 突然名探偵が閃き正解に向かって雪崩れ込むパターンではなく、主人公が確信を持って突き進んだ結果迷走したりする辺りは 楽しいのですが、どうも謎解きが煩瑣で素人(またはマニアではない人間)にはチと判り辛い。シリーズはドラマになっている そうなので将来ソチラを試してみようと思います…多分。
P.K.ディック P.K.Dick
『模造記憶』
『模造記憶』
We can remember it for you wholesale
and 11 other stories
訳:朝倉久志他
新潮文庫
平成22年4月19日読了
 もともとSFは読まないのですが気の迷いで手に取ってみました。
 しかし面白かったですね、僕にも充分。
 知的な遊びとでも言うべきか、コチラの思考回路を試されているような気がして来ましたが、それはまぁ僕の思い込みとしても普段は味わえない愉快さでした。
 ちなみに映画『トータル・リコール』の原作になった『追憶売ります』ですが、こっちの方が遥かに面白いですね。当時はファンの間でどう評価されていたの かしらん…知らない方が良いかなぁ?
ジェフリー・ディーヴァーJeffery Deaver
『獣たちの庭園』
『獣たちの庭園』
Garsen Of Beasts
訳:土屋晃
文春文庫
平成20年3月16日読了
 裏表紙の紹介文によると著者は「どんでん返し職人」だそうですが、少なくとも本書に限っては名前負け。この程度で 職人を語ってはイカンだろうとすら思います。まぁ作者の所為ではないのですが。
 いきなり酷評するようですが全くの駄作という訳では有りません。興味深い登場人物も居ます、ただ残念ながら 主人公ではないんですけどね。またベルリン五輪直前のドイツという舞台設定もきな臭くて興味をそそります。
 ただ期待はアッサリと裏切られます。
 最大の問題点は緊迫感を出そうとしたのでしょうか、物語を日数限定で描いている点です。その為に書き込みの足りない 性急な展開になっています。そのくせ冗漫な印象を受けるんだよなぁ…なんでだろう?
 変に才気走って勉強したコトを詰め込もうとしたりせず、また小手先のサービスに頼ったりしなければ面白くなった ろうにと残念です。
テニスンTennyson
『イノック・アーデン』
『イノック・アーデン』
EnochArden
訳:入江直祐
岩波文庫
平成年10月18日読了
 古い小説を読んでいるとたびたび名前が出てくるので興味が有ったんですけどね、テニスンって。まぁ往時の青年には魅力的だったのでしょうが、 後の時代に生きており既にオヤヂと化している僕にはチョイとねぇ…まず散文の方が好きなので仕方がないですね。


コナン・ドイルConan Doyle
『緋色の研究』
『四つの署名』
『シャーロック・ホームズの冒険』
『シャーロック・ホームズの思い出』
『バスカヴィル家の犬』
『シャーロック・ホームズの帰還』
『緋色の研究』
A study in scarlet
訳:阿部知二
創元推理文庫
平成23年10月9日読了
 僕にとってホームズと言えば、いしいひさいち『コミカル・ミステリー・ツアー』でしかなく、ドラマですらちゃんと観ていませんでした。 そんな僕でしたが全くの気の迷いでBBC制作の現代版を観て一気に原作の文庫探しに走りました。いや面白いですね…って、今更ですが。
 全くの予備知識の無さが幸いして、前半と後半の大胆な場面転換に素直に驚けました(モルモン教に対する“悪意”にもっと驚いた。コレって当時の 認識なのか、著者の偏見なのか、はたまた…?)。いや愉快愉快。残念なのは得意顔で他に勧められないコトですね、むしろ笑われそうだし。
 目下の楽しみは原作を全部読んでから保存してある現代版のドラマを観返すコトなのです。
『四つの署名』
The Sign of Four
訳:延原謙
新潮文庫
平成23年10月28日読了
 非常に面白く読みました。後半で世界史の授業で学んだ大事件が舞台になっていたのには仰天しました。なにしろ同時代の大事件だったろうとは 思いますがそれを盛り込んでいたとは…もっとも僕の頭の中で望月三起也『秘密探偵JA』の絵が浮かんでいたのですが。
 ロンドンの路地裏を虫めがね片手にパイプをくわえて、なんて考えていましたがスケールの大きい小説だったんだなぁ。
『シャーロック・ホームズの冒険』
The Adventures of Sherlock Holmes
訳:延原謙
新潮文庫
平成23年11月2日読了
 意外に楽しめた…というのも失礼な話だが、推理小説に対して偏見があるもんでして。計画殺人犯が名探偵に挑戦…ばかりじゃねぇ?
 コチラの勝手な思い込みなど簡単にかわす軽やかさで非常に愉快な作品ばかり。ホームズがしてやられたり犯罪とは言えないようなモノも有ったりで、 就寝前の豊かな楽しみだった。
 ところで「赤毛」に出てくる犯行の手口は、現実の犯罪やら幾多のフィクションでも使われているのですが…まぁ古くから有るのでしょうが元ネタっぽいのを 探す人はいないのかしら?居ないか、世界中に有りそうだし。
【関連作品】
 この手のフィクションではウディ・アレン『おいしい生活』が印象的です。犯行計画はそのままですが思わぬ方に転がって行くのが楽しい。
『シャーロック・ホームズの思い出』
The Memories of Sherlock Holmes
訳:延原謙
新潮文庫
平成23年12月24日読了
 やはり面白い。なによりも必ず殺人が起きないのがね、とりあえず殺しとけ!ぢゃねぇ。
 興味深いのはホームズの失敗を描く「黄いろい顔」や犯人を捕まえ(られ)ずに終わるモノでしょうか。未読無知の頃に思い描いていた 脅威の名探偵ではないのがむしろ楽しいくらいです。
 気になる「最後の事件」ですが、なるほど作者がいかにホームズに疲れていたかが窺われて面白い。その直前の「海軍…」が妙に長く二回に 分けたのが引き延ばしに感じられたのだが、あぁ勤続披露(即ちネタ切れ)なんだなぁと。
 いずれ書かれるべき巨悪モリアーティー教授との対決シリーズの序章である…なら別ですが、単品として読むと「嫌ってくれて結構だゼ」ってな 別れ話に思えます。もっとも同時代の読者は予告編としか受け取らなかったんでしょうが。
 おかげで更に読めるんだから感謝至極ですね。
『バスカヴィル家の犬』
The hound of Baskervilles
訳:延原謙
新潮文庫
平成24年1月6日読了
 正直に告白すると途中までは退屈に感じられ、やはり短編の方が好ましいと思いました。手をかえ品をかえと表現にしているなぁと。
 しかし終盤はさすがで情景描写の見事さと相俟って手に汗握る緊迫感でした。この辺り“本格派”と未分化な時代の良さかと推測されますが どうなんでしょうか?
 まぁ最後の帳尻合わせなどが力任せなのは、毎度のコトというかご愛敬…ですかね。判らないコトは判らない、で済ますのは考えようによっては リアルとも言えますが。
『シャーロック・ホームズの帰還』
The Return of Sherlock Holmes
訳:延原謙
新潮文庫
平成24年1月25日読了
 特に最後に収録された「第二の汚点」の冒頭に作者のホームズ疲れが現れていて面白い。せっかく「空家の冒険」で復帰させたのに 一年の連載で終わらせようってんだから。
 作品としてはそれぞれ変化を出そうと工夫がされており、ホームズがしてやられ(かけ)たりテキトーにはしていませんが。もっとも熱烈な ファンからすれば事件や真相がぬるく思われたりもするでしょうが。
S・ドゥビンスキーStevenDubinsky
『デコイ・コップ』
『デコイ・コップ』DecoyCop
S・ドゥビンスキー&L・スタンドラ
StevenDubinsky & LeoStandora
訳:間庭恭人
ハヤカワ文庫
平成年10月14日読了
 冒頭から印象的で、個々のエピソードは非常に興味深い。
 惜しむらくはなんとなく現在進行形で中途半端に終わられてしまった感じ。もう少し整理して後日談などを補完してくれると纏まったんじゃないかしらん。
 なんとなくケント・アンダーソンの『ナイト・ドッグス』を思い出しつつ読みました。やはり“時代の匂い”というものは有るもので、似たような舌触りかと。
【関連作品】
『ナイト・ドッグス』ケント・アンダーソン:ちなみにコチラはフィクションです。
常盤新平
『川明かりの街』
『グラスの中の街』
『川明かりの街』
文春文庫
平成21年10月11日読了
 なぜと問われると困るのですが高校か大学時代の一時期、氏のエッセイ集をよく読みました。マフィアについて興味を 持ったのも、1920年代のアメリカについてもまた同様なのも氏の影響。
 その味わいは滅多に会うことの無い、しかし自分に似た親戚の叔父の話を聞いているような感じでしょうか。
 もっともその後は全然違う人生で、僕には氏のような同窓の友人たちは居ませんし(基本的に人間関係に淡白だし)、 また外国ともあまり縁が無い生活をしていますが。
 自分の好きな街が度々登場するのがまた大きいのかもしれません。四ツ谷や市ヶ谷のように。
『グラスの中の街』
文春文庫
平成21年10月13日読了
 本書のシリーズ続編である『川明かりの街』を読み、思い出したように再読しました。
 初読当時は判っていなかったなぁと老化を自覚しつつ共感したり、自分では進み得なかった別の人生の香りを 感じてみたりと楽しめました。
 こういう言い方って拙いかもしれませんが、男の読み物だなぁと。
徳田秋声
『縮図』
『縮図』
岩波文庫
平成21年11月3日読了
 自然主義文学の大家である云々と教科書なぞで名前だけは知っていた徳田秋声ですが、実際の作品は初めて読みました。
 しかしコレ、すごいのか?
 太平洋戦争直前という発表当時の時節柄、当局から圧力がかかったり果ては作者が他界して未完成であるコトを差し引いても 大した作品には思えないんですけどね。
 千葉市蓮池や稲毛、習志野や佐倉が自分のイメージにない形で出て来たりして、その辺りは楽しく読みましたし、芸者の世界も 知らないコトばかりなので多少の興味は持てました。元々古い小説を読むのは好きですし。
 ただソレでも全体として高い評価は考えられません。
 文章が下手なんだもの。
 ナンとはなしに引き摺られて読んでしまうので、さすがに長い間を文学修行に費やしたのだと感心はします。が、ナニも 知らない国語の教師に見せたら嬉々として添削するんじゃないでしょうか?
 でもアレか、やっぱり退屈しないで読ませただけスゴいのかしらん???
徳富蘆花
『不如帰』
小説不如帰』
岩波文庫
平成23年5月29日読了
 なんとも驚くほどのお涙頂戴で、これが爆発的に売れたのかと俄かには信じかねた。いや日清戦争の激闘と勝利や結核への恐怖など時代の 雰囲気もあったろうが、それにしても青年期の感動はもはや血も涙も無いオッサンには一過性の病気にしか思われない。
 いずれにしてもこれが文学史に名を残して良いのか、と。売れただけなら別だけどなぁ。
 唯一の救いは『月と六ペンス』などのように史実になってしまっていないコトでしょう。現代ではそんなに読まれていないでしょうから (モデルに激怒されたのは同類ですがね、あとがきで事情を説明しているだけ本書の方が罪が軽いかもしれません)。
富永俊治
『三原脩の昭和三十五年』
『三原脩の昭和三十五年
「超二流」たちが放ったいちど限りの閃光
宝島社文庫
平成19年6月1日読了
 長年のホエールズ・ベイスターズのファンだからという訳ではないが(多少は有るか?)読み物としては滅法面白かった。 書き慣れていると言うか上手いなぁと感心もさせられたりして。
 過不足なく世相背景を紹介しているので、生まれていない時代での話ではあるが雰囲気は伝わるので臨場感が有る。また選手 個々の紹介が上手く配置されていて、一本調子にならず飽きさせないのが楽しい。
 なにより語り口が良いんだよなぁ。
 話し好きのオジサンの名調子を聴いている感じで「それで、それで?」と続きをせがみたくなります。基本的に直接取材を しているようなので、その辺りも関係しているのか知らん?筆者は多分ベイスターズのファンでは有りますまいが、それでも この年のホエールズを愛し、楽しんで書いているのが伝わりコチラも楽しくなってきます。また翌年以降についてのエピローグも 切なくて良い。
 ただし惜しむらくは「読み物以上」ではなく、ホントに読み物であると言う点。 せめて最後に参考文献の類があれば続けて更に知りたくなった読者の便になったと思うのですが?
【関連書籍】
『球団消滅幻の優勝チーム・ロビンスと田村駒治郎中野晴行
『魔術師三原脩と西鉄ライオンズ』(全二冊)立石泰則
伴野朗
『南海の風雲児・鄭成功』
『南海の風雲児・鄭成功』
講談社文庫
平成19年9月27日読了
 台湾が大好きで鄭成功に以前から興味の有った僕としては飛びついて当然の作品でしたが、 イマイチ食い足りない感じでした。思うにその一番の要因は紙数が不足しているコトで ありましょう。
 収録3作品のうち面白かったのは「鄭成功物語」で、「小説・南海の風雲児」はむしろ 腰が入っておらずシラけてしまったのが惜しい。
ジム・トンプスンJim Thompson
『おれの中の殺し屋』
『おれの中の殺し屋』
Killer Inside Me
訳:三川基好
扶桑社ミステリー
平成22年4月14日読了
 一行目からピンと来たのですが、いや面白いのなんの。それにしても1952年の作品とは思えず(もっとも現代の感覚からすると 多少テンポが呑気な感じがしなくもない)まるで古さを感じません。むしろ現代的とすら言えるんじゃないかしらん?
 どこが…という話をすると所謂ネタばれになりますので言葉を濁しますが、前半で感じた違和感のようなものが、終盤で明らかになる真相により 実は周到に計算され構成されていたのではないかと考えさせられます。更に考え込む暇を与えないラストはもう…とにかくお勧めです。
 まぁ万人向けではないでしょうけどね、ハイ。
S.L.トンプスンSteven.L.Thompson
『上空からの脅迫』
『上空からの脅迫』
Airburst
訳:高見浩
新潮文庫
平成20年10月31日読了
 東西冷戦も歴史の教科書に居場所を移した今日ではご存知の方も少ないかと思いますが、一時期熱狂を博した“奪還チーム” シリーズの完結編です…多分。
 同シリーズの最初の2作は気合が入っておりガキの頃にかなり興奮して読んだものですが、本作はヒデェの一言。そりゃ シリーズも終わるよなぁ。もっとも新潮社が無理に書かせたものらしいのでソレもムベナルカナ?
 アイデア自体はさすがでしょうしヴァーチャル・リアリティを扱っている辺りも先見の明に富む作者ならではですが、しかし 如何せんやる気が感じられない。
 作者の興味は完全に主人公から離れている気がしました。いや小説自体から離れていたんじゃないかしらん?
 作者らしい苦味を感じさせるのがラストの一言だけでは一冊を付き合うのには長過ぎる。